楽しいはずの修学旅行。
…まさか、こんなことになるなんて誰が想像出来ただろうか?





賑やかなバス車内。談笑したりトランプなどのゲームをしている者たち、ゲームボーイで対戦している者たち。
教師も生徒も多いに楽しんでいた。それなのに。僕は、ふと窓の外を見る。異様なまでの軍人の数。
(何故こんな所に、陸軍が?)
そして、無数のジープや迷彩柄のワゴン。何か不吉な事が起ころうとする前触れの様に僕は感じた。

車内を再び見まわす。シゲさんや水野くんたちが楽しげに写真を撮っていた。
何やら水野くんが怒鳴っている。それを見て苦笑うシゲさんたち。
一体なんだろう?この胸騒ぎは。どくんどくんと早鐘の様に脈打ち、鳴り響く僕の心臓。
どうすればこれは収まるのだろう?
やがて隧道にさしかかる。
不意にみんなの賑やかな声が静かな寝息に変わっていた。変だなと思い、周りを見る。
起きている者の姿は見受けられなかった。床に散らばったトランプ。精密機械のゲームボーイすら床に落ちたまま。
持ち主はだらりと腕を伸ばし、肘掛にうなだれた様子で眠りこけている。
明かに尋常ではないみんなの腑に落ちない急激な集団睡眠。
僕は、それを見ていわれの無い嫌な予感は確信へと変わった。
どこかで行われる一年に一度のブラッディカーニバル。確かそんな名称で囁かれていた。
僕は、睡魔に襲われ意識を手放す寸前、異様なそれを見ていたらしい。
対有毒用ガスマスクを付けた運転手とバスガイドの二人を。


(…ん?何か急に眠気が…。変やな?先刻まで寝とったんに)
シゲは周りの異様さに気付いた。床に転がった渋沢が作ったクッキー。
先刻まで、水野が美味しそうに食べていた包みごと床に転がっている。
後ろの席の水野も、斜め隣の渋沢も三上も何かただ事ではないように眠りに就いている。
「集団睡眠…?なんやそれ」
自分で呟いた言葉に、突っ込んでみる。
かたんかたんと揺れるバスの中、シゲの方へ歩いてくる者が居た。
毒ガスマスクを着用したバスガイドのお姉さん。
手には物騒なものが握られていた。
…野球なんかで使う場合は寧ろ好意的だが、喧嘩などで使うとコレほど危険な物はそうそうない。
銃刀法が一応お情け程度確立された、ここ大東亜共和国の一部日本という国では。
(*この話では大東亜共和国と日本とは一緒だけれど別な国という考え方です…意味不明)
金属性(MN合金/笑)をシゲの頭めがけて降り下ろした。
ガンッ!!
「っ痛……」
シゲは頭を抑えたまま深い眠りに落ちた。




シゲは、うっすらと目を開ける。殴られた部分がずきずきと痛み、そこをさすりながら体を起こした。
ぼんやりとした視界。
窓から差し込む月明かりだけが教室の中を薄明るく照らしていた。
シゲは漸く慣れてきた目で教室らしき所を見まわす。
まだ眠っているものも少なくない。見知った顔ばかり。それはそうだろう、修学旅行へ行く途中だったのだから。
「クラスの奴ら?」
シゲが呟いた時、窓の外にヘリコプターのプロペラが回転する爆音がうるさく響き、強い光りが差し込み、
みんなは一斉に窓の外へと近寄る。窓ガラスがじりじりと共鳴して嫌な音を発していた。

程無くして、教室の戸が開き、廊下側から軍服の兵士達が教室に雪崩込み、定位置で止まった。
教卓の前に立った人物には見覚えが有った。一年の時の担任。誰かが呟いた…『尾花沢』と。
「やぁ、皆。久し振り。一年の時担任だった尾花沢です」
ざわりと生徒たちに緊張が走り、少し後退さる者達もいた。
「はい、静かに。今日から三日間、君達の担任になります。よろしくね(嫌味っぽく)」
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」
「なっ…」
教室中がざわめき色めき立つ。
すると、尾花沢はカツカツカツと白いチョークで黒板にBR法と大きく書いた。
「コレが何だか解る人いますか?」
みんなは沈黙する。
「はい、ダメ。ダメ。この国はもうダメになってしまいました」
言いながら、尾花沢は教卓を離れ生徒の方に近寄ってくる。
後退さる生徒たち。
「私語をするなと言っているだろう」
ぽかんっと頭を殴られたのは、桜庭だ。
上原はいきり立つと、桜庭の代わりに尾花沢に突っかかって行った。
それも束の間だが。
「やぁ、水野久し振りだね。これでも、先生水野くんのこと気に入ってたんだけどな」
標的はいつの間にか、水野になっていた。
水野と尾花沢の間に確執があったのは周知の事実だった。
水野はただ睨み返すだけだった。
「はい、それではビデオ見るぞー」
尾花沢がそういうと、兵士によってテレビとビデオのラックが運ばれて来ていた。
ピッ。尾花沢の指示で兵士がビデオをスタートさせる。
テレビ画面に映ったのは、優しそうな男性だった。
その男性はサッカーをやっている者なら知らない者は多分いない
J1柏の小島選手だった。
この雰囲気には場違いな程楽しげに微笑みながら、ビデオの中の小島選手は
バトロワのルール・場所・支給武器についてなど話し出した。
首輪の説明に入った途端、今までそれをいじっていたものも青ざめ、
直に首輪から手を離した。
「私語をするなと言っただろう!」
ひゅん。
尾花沢の投げたナイフが吉田の額にクリーンヒット。
尾花沢は吉田の額からぐりぐりとナイフを引き抜くとイヤな笑みを浮かべた。
一変して教室の中は恐怖と混乱に陥った生徒たちが逃げ惑い、
それを止めるため兵士たちは銃を乱射した。
やがて靜寂を取り戻した教室にビデオがリスタートされる。
・
・
・
ビデオが終わると尾花沢は質問を受けつける。
「優勝したら帰れるんですか?」
いつもとは打って代わってびくびくと怯えた様子で、藤代は訊く。
「ええ帰れますよ」
それを聞いて一瞬安堵の表情をついたものは知らない。
それが他人に疑惑や疑心を抱かせたことを。

そう言った尾花沢に対して、とっさに意見するものが居た。
「一体、どういう意味ですか?なんで、俺達が連れてこられたんですか?」
元々立っていた郭が言った。
「何でこんな事するんです?」
郭が再び問う。
「お前達の所為だよ」
酷く冷たい声で尾花沢は言った。
そして、黒板の方を向くと、それを指差し言った。
「バトルロワイアル法」
みんなも一斉にそちらを注目する。
そして、前の戸が急に開き、白いシーツを掛けられたものが運ばれてきた。
酷く生臭い異臭。
ばっ。兵士達がシーツをはぎ取った。
血まみれで無残極まりないその遺体は、彼等の担任雨宮東吾のものだった。
「はい、これはダメな大人の見本です。こんな風にならないよう、皆さんは沢山殺して
良い大人になりましょう」
その言葉に激高した水野が尾花沢に掴みかかった。
慌てて兵士達数人で抑えつけると、首輪のセンサー部分が見えるように
頭を上に引き固定する。
尾花沢はポケットからリモコンのようなものを取り出すと、ピッとボタンを押した。
ピピピピピピピピピピピピピと首輪から発振音が鳴り響きだす。
水野は恐怖のあまりクラスメイト達に助けを求め、
しかし誰もが恐怖の為彼を救おうとはしない。
首輪の音が臨界にまで達する。
二人は2メートル程度離れた場所からお互いに手を伸ばし、叫んだ。
「シゲ!」
「タツヤ!」
ボンッ。
無慈悲にも首輪は水野の喉元を引き裂き、血の雨を降らせた。
ふらり。
「はは…嘘やろ?」
乾いた声が喉の奥から微かににじみ出た。
シゲはおぼつかない足取りで水野の遺体の傍へと歩きだす。
傍に寄ると水野の遺体の前で膝をついて頭を垂れた。
水野の遺体にすがりつくと声無く泣いた。
不意に飛び散った血の中に血まみれな1枚の写真を発見する。
シゲはその写真を拾い上げる。
水野の顔だけ首から上が撮れていない。
三上が少し悪戯心からフレームから外したのだが。
先程までは……半日前までは、皆で楽しく修学旅行を楽しんでいた。
目的地に着くまでのバスの中とは何とも楽しいもので。
けれど……。
自分たちは今、最悪なゲームへの逃れられない招待を受けざるを得なくて。
どうして?なんでこんなことに?
彼らは戸惑い怯え恐怖する。
【残り40人】

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